| 近年、米国をはじめとする海外では、食品原料がバイオマスエネルギーとしてエタノール需要に流れている。トウモロコシやサトウキビ、タピオカ、小麦が該当し、すでに海外ではガソリンに混合されて利用が進む。高値安定の原油相場に比例して、エタノールの生産量と工場が増加。クリーンなエネルギーとして脚光を浴びるようになってきた。地球環境を考えるエコロジストでなくとも、環境破壊は気になるところで、且つわが家の家計にも優しいとあればなおさら、わが国での利用が待ち遠しい。しかし、この動きに危機感を募らせる業界が存在する。これらを主原料に食品素材・添加物を生産しているメーカーである。食品原料がエタノール向けに利用される影響は、どこにあるのか。ここでは、世界最大のトウモロコシ生産量を誇る米国の事情を中心に最新動向を追う。
わが国では、スターチ用に年間350万tのトウモロコシが消費され、その大半がnon GMOである。しかし今後、エタノール需要がさらに旺盛になってくれば、最悪の場合、輸入向けに影響がでてこないとも限らない。エタノール工場は、トウモロコシの生産地域に密集している。栽培農家にしてみれば、いつオーダーがくるかも分からない輸出向けの生産を行うよりも、目の前の工場に卸した方が良い。工場側も価格的な折り合いさえつけば、手当てが確保できるにこしたことはない。
USDAの発表によれば、エタノール用に使用された米国のトウモロコシは、05〜06年度のクロップで4000万t。一方、世界各国への輸出量は、5300万tとなっている。ところが、06〜07年度の予想では、5400万tものトウモロコシがエタノール向けに利用される見通しだ。わずか1年でエタノール向けが35%増となった。この数値は、米国における年間生産量のおよそ20%に当たる。しかし、米国からの輸出量は例年と変わらない。エタノール需要が増加したからといって、トウモロコシの生産量が増えているわけでもなく、むしろ減産の方向に向かっている。現在、エタノール需要の増加分は、在庫消費で賄っている状況だ。
またエタノール生産に関する問題は、これだけに留まらない。その副産物である「DDGS(DistillersDried
Grains with Solubles)」が配合飼料用原料として国内に輸入された場合、糖化メーカーの収益を圧迫する可能性がでてきている。トウモロコシを原料に製品化される異性化糖やぶどう糖は、副産物としてグルテンミールやグルテンフィードが得られる。それらは、配合飼料原用として国内の飼料メーカーに販売されている。一方、DDGSの飼料価値は、たん白値が27.3%で脂肪分が12.1%。グルテンミール(たん白値:19.8%、脂肪分:2.4%)やグルテンフィード(たん白値:64.1%、脂肪分:3.2%)と比べて、たん白値は中間に位置し、脂肪分に至っては、数倍の含有率となる。日本国内でのグルテンミールとグルテンフィードの需要は、合わせて100万t。仮にDDGSが日本で安価に流通することになれば、当然、グルテンミールやグルテンフィードの市場がターゲットとなってしまう。配合飼料用原料は、価格ありきである。その市場にDDGSが本格参入を果たした場合、糖化メーカーの選択肢は1つしかない。…価格を合わせること。
今まで体内でエネルギーに変換されてきたものが、自動車等のエネルギーとして利用される時代が到来した。そのことで、食品分野の需給が逼迫してしまうことは、本末転倒としか言いようがない。
出展:2006年7月27日(木)食品化学新聞より
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