低抵抗型永久帯電防止剤

プラスチックは、成形性、軽量性、電気絶縁性などに優れており、家電・OA機器、自動車内装材、建築材料、包装材料などの幅広い分野で使われている。一方で、電気絶縁性が高いため表面が帯電しやすく、ほこりや汚れの付着、製品同士のはり付き、電子機器の誤作動、粉じん爆発や火災などの原因になる。

こうした問題を避けるため、使用目的に応じてプラスチック表面の表面固有抵抗値を制御する。その代表的な手段が、帯電防止剤を用いてプラスチックの表面固有抵抗値を調整する方法である。

帯電防止

帯電防止剤を用いてプラスチック自体を導電化する方法は一般的である。ほこり付着防止が目的であれば、表面固有抵抗値を少なくとも1012 Ω台以下にすればよい。従来は、界面活性剤をプラスチック表面に塗布する、または内部に練り込む方法が使われてきた。

この方法では、空気中の水分を介して静電気を漏えいさせるが、水洗いや布拭きにより効果が低下しやすい。また、湿度依存性が大きい。導電性フィラーを添加する方法は持続性や湿度依存性に優れるが、添加量が多く、樹脂物性や外観、成形性に影響を与えやすい。

高分子型永久帯電防止剤『ペレスタット』

三洋化成は、高分子型帯電防止剤『ペレスタット』シリーズを製品化している。『ペレスタット』は、導電性ユニットとしてPEO鎖を有する特殊ブロックポリマーで、ABS樹脂、HIPS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、PC/ABSアロイ樹脂などに10質量%程度添加することで永久帯電防止性を付与できる。

主な特長は、成形直後から効果を発揮し半永久的に持続すること、機械特性や表面特性を著しく低下させないこと、熱安定性に優れること、各種樹脂への分散性が高いこと、低湿度下でも高い効果を発揮すること、ブリードアウトがなく接触物の汚染が少ないこと、顔料で任意にカラーリングできることなどである。

粒子が微分散した状態から筋状の導電ネットワークを形成し、電荷が逃げる仕組みを示す模式図
図1 高分子型帯電防止剤の帯電防止性の発現機構

プラスチック表面に蓄積した電荷を逃がすためには、適度な導電性を有する材料で導電回路を形成する必要がある。『ペレスタット』を樹脂中で筋状に分散させることで、表層部に導電回路が形成され、半永久的な帯電防止効果が発現する。

低抵抗型永久帯電防止剤『ペレクトロン』

『ペレクトロン』シリーズは、三洋化成独自のポリエーテル系ブロックポリマーによる帯電防止性付与技術を進化させたものである。『ペレスタット』の優れた特長を維持しながら、より少量の添加量(3 - 4質量%程度)で永久帯電防止性を付与できることが最大の特長である。

『ペレクトロン』自身の導電性は、ポリエーテル鎖のイオン伝導性を最大限に発揮する組成設計により、表面固有抵抗値を106 Ωまで低くしている。さらに、帯電防止剤の相溶性と溶融粘性を制御する分散制御技術を組み合わせることで、成形品表層部に効率的に筋状の導電回路を形成する。

HIPS樹脂へのペレクトロンHS添加量と表面固有抵抗値の関係を従来品と比較したグラフ
図2 『ペレクトロンHS』の添加量と帯電防止性の関係

テストピース作成方法: HIPS樹脂と『ペレクトロンHS』のドライブレンド物を単軸押出機で混練(温度: 220℃)し、射出成形機(射出成形温度: 220℃、金型温度: 50℃)を使用してテストピースを作成した。

図2では、HIPS樹脂に対する『ペレクトロンHS』の添加量と帯電防止性の関係を示している。従来の高分子型帯電防止剤では10質量%程度が必要であったが、『ペレクトロンHS』は3質量%程度で優れた帯電防止効果を発現している。

ペレクトロン3質量%添加成形品表層部の断面TEM写真。黒い筋状部分が導電回路
図3 HIPS樹脂/ペレクトロン(3質量%)成形品表層部のTEM写真

黒い筋状に見えているのが『ペレクトロン』である。成形品表層付近で筋状に引き伸ばされ、電荷の導電回路となっていることが分かる。

表1 『ペレクトロンHS』を添加したHIPS樹脂の特性

ペレクトロンHSの添加量(質量%)036
表面固有抵抗値(Ω)1×10162×10111×109
引張強度(MPa)191918
曲げ弾性率(MPa)1,6901,6401,600
アイゾット衝撃強度[ノッチ付き](kJ/m2655

テストピース作成方法: HIPS樹脂と『ペレクトロンHS』のドライブレンド物を単軸押出機で混練(温度: 220℃)し、射出成形機(射出成形温度: 220℃、金型温度: 50℃)を使用してテストピースを作成した。

水洗回数に対する表面固有抵抗値の変化を界面活性剤型帯電防止剤と比較したグラフ
図4 帯電防止性の持続性評価

評価方法: 試料を綿布で水洗した後、減圧乾燥(133Pa、70℃、2時間)した。次いで23℃、50%R.H.の雰囲気で24時間調湿した後、超絶縁計を用いて表面固有抵抗値を測定した。この操作を水洗回数に応じて繰り返した。

界面活性剤型帯電防止剤と比較すると、『ペレクトロンHS』は水洗後も低い表面固有抵抗値を維持し、持続性に優れる。

『ペレクトロン』シリーズの性状例

表2 『ペレクトロン』シリーズの性状例

項目ペレクトロンHSペレクトロンPVH
外観淡黄色ペレット淡黄色ペレット
融点(℃)約136約150
MFR(g/10min)(190℃、21.18N)約3約3
屈折率1.501.50
表面固有抵抗値(Ω)2×1063×106
標準添加量(質量%)3 - 53 - 5
対象樹脂HIPS、ABS、PP、m-PPEなどPC/ABS

*1 帯電防止剤単独の射出成形板を作成後、超絶縁計で測定(23℃、50%R.H.) *2 表面固有抵抗値=1011 - 1012 Ωを付与する添加量

ICトレー・搬送トレー・防電マット・コピー機・掃除機・テレビなど用途別の写真をまとめた相関図
図5 永久帯電防止剤の応用例

応用例として、電子部品・回路の保護、電撃ショックの防止、ほこり・汚れの防止、誤動作の防止が挙げられる。電子部品搬送トレー、ICトレー、フロアーマット、コピー機、テレビ、掃除機など、用途に応じた高分子型帯電防止剤の選択が重要である。

今後の展開

永久帯電防止剤の有用性、必要性は電気・電子分野を中心に徐々に認識され、市場は広がっている。高度化する静電気放電対策や防塵対策を背景に、需要のすそ野は「必要な分野」から「望ましい分野」へと拡大していくと期待される。新たに開発した『ペレクトロン』シリーズは、このような市場ニーズに対応した製品であり、各分野への普及が期待される。

参考文献

  1. 高井好嗣、静電気学会誌、21(5)、212(1997)
  2. 『帯電防止材料の設計と使用法』、サイエンス&テクノロジー(2007)
  3. 藤本武彦監修『高分子薬剤入門』、三洋化成(1992)
  4. 筧哲男監修『パフォーマンス・ケミカルスの機能シリーズ』、三洋化成(1999)

本記事は三洋化成工業株式会社の許諾を得て転載しています。
出典:三洋化成ニュース 2010 冬 No.463 / 著者:野田 英利(機能性樹脂研究部 ユニットチーフ)

その配合課題、商品選定だけで解決しようとしていませんか?
性能・コスト・規制対応まで、最適な“組み合わせ”から設計します。

こんなお悩みはありませんか?

最適な添加剤が
見つからない

お悩みイラスト1

新機能に関して
社内に知見がない

お悩みイラスト2

性能は変えずに
コストダウンしたい

お悩みイラスト3

既存材料の
代替品を探している

お悩みイラスト4

添加剤ドットコムなら、お客様の課題に合わせて
最適な添加物や解決策をご案内します。

豊田通商グループの国内外のネットワークと豊富な人材を活かし、お客様の事業が抱える課題の解決に向けた技術提案を行います。それぞれの得意分野を持った、3つの化学品専門商社が合併した背景から、お客様のマーケットも幅広く、各領域での知見も深いことから、お客さまに合わせた最適なソリューションのご提案が可能です。

添加剤ドットコム担当者

添加剤の
組み合わせで解決

豊富なノウハウ
による提案

コスト最適化の
ための施策検討

代替品の探求と
お取り扱い

商品に関する詳しい情報・ご相談など添加剤選びのパートナーにお気軽にご相談ください。

添加剤ドットコムなら、お客様の課題に合わせて
最適な添加物や解決策をご案内します。

商品に関する詳しい情報・ご相談など添加剤選びのパートナーにお気軽にご相談ください。

365日24時間受け付け。サンプルは送付審査から通常1週間以内発送。

新規会員登録

商品に関する詳しい情報・ご相談など添加剤選びのパートナーにお気軽にご相談ください。

ご相談・お問い合わせ

取引先拡大、用途開拓、技術提案の機会創出をご検討中の企業様はぜひご相談ください。

サプライヤー募集のお問い合わせ

お電話でのお問い合わせ

03-4306-8662

受付時間 平日9:00-18:00